読み応えのある本は、ボクの睡眠時間を削るので、悪い本だと思う。
ま、それはさておき、生物無機化学の某先生による書評を見て、吉村昭著『冬の鷹』を手に取った。
江戸後期、蘭医学書の『ターヘルアナトミア』を翻訳した『解体新書』が出版された。翻訳者の名には
杉田玄白。しかし、実際にこのターヘルアナトミアを読み下し、翻訳したのは
前野良沢 だった。今でこそ、この前野良沢という人物の名は多少は認知されているが、解体新書に翻訳者として名を連ねなかったことで、名声を得た杉田玄白とは対照的な人生を送った。『冬の鷹』は、前野良沢の生き様に焦点を置き、杉田玄白のそれと比較しながら描いている。
解体新書の翻訳者に前野良沢の名が無いのは、「不完全な箇所が残されている状態で、出版することは道義に合わない。それに、名を残すために蘭学に勤しむわけではない。」と
前野良沢が拒んだ ためだとされる。一方、杉田玄白は「たとえ不完全な箇所があっても、一刻も早く出版することで、日本の医学の進展に貢献すべきだ。」との立場を取った。自らの名を残したいという欲も、もちろん多少はあっただろう。
某先生の書評にもあるが、前野良沢と杉田玄白の対比は、研究者としてどうあるべきかということにほぼそのまま置き換えることができる。
前野良沢の学問(蘭学)に対する真摯な姿勢は、科学者が実験結果に向き合うべき態度
そのもの である。しかし、得られた結果を世に示す(あるいは世に問う)ことも、科学者としての重要な使命である。そういう意味では、前野良沢は自分の名前をはずすことで、翻訳した文章に対する責任を放棄してしまったともいえる。
「もし何かを表現できないなら、それは存在しないのも同じだ。」
これは村上春樹『風の歌を聴け』の一節にあるセリフだが、ボクはこれを実験ノートの1ページ目に書くことにしている。
(色々と誤解を生みかねない表現でもあるので、真意を知りたい人はボクに聞いて下さい。)
杉田玄白、前野良沢どちらが欠けても、あのタイミングで解体新書を出版することはできなかった。この二人の人物から反面教師的に学べることは、バランス感覚だろう。どちらか極端に偏った研究者というのは個性的で魅力的な人もいるが、よほど力がないと厳しい。
本書では、
平賀源内 を背景に登場させることで、玄白・良沢の対比をより鮮やかにしている。異なるベクトルをもつ才能と才能のぶつかり合い。実に面白く、また一研究者として色々なことを考えさせられた。
いやはや、つくづくボクの睡眠を削る悪書であった (^_^;)
- 帰阪
(11.7.20)
3ヶ月半ぶりに関西へ。まずは馴染みの中華料理屋「いこい飯店」に直行。うむ、相変わらず焼飯がうまい (^o^) そこから3日間、色々な人達に会い話し、休日はあっという間に過ぎてしまった。
やはり9年間も慣れ親しんだ地に行くのは、ボクは関東人だけれども「懐かしい」気持ちになった。
大阪に“帰る” という感覚さえあった。しかし、3ヶ月半とはいえ(当然ながら)もはやボクの知らない大阪もまた、そこには存在していた。新しい研究室のメンバー、新しい大阪駅ビル、いたはずなのにもう大阪を離れていなくなってしまった人々。もう自分の居場所はここではないのだな、そんなちょっぴり寂しい気持ちも沸いてきて、何だか不思議な気分になった。
行きの新幹線は、つくばからすぐ着いたのに、帰りは遠く感じるなぁ。ホントに少し遠くなったんじゃないか!? 死ぬまでには、リニアモーターカーに乗って大阪に来てみたいな…。とりとめもないことを考えながら、少し眠ろうとしたが、どうもシューマイのニオイがプンプンしてしゃあない。
チラリと隣の席の30代女性の方を見る。でっかく
551(大阪で有名な中華チェーン)と書かれた袋に入っていた弁当を頬張りながら、
一番搾りをがぶ飲み している。酒を飲める女性はポイントアップだけど、これはアウトかな (^_^;) 暇つぶしに乃南アサ『ウツボカズラの夢』を読んでみたが、シューマイのにおいにかき消された。
今回お会いしたみなさまも、できなかったみなさまも、また次の機会に。温かくアツローを迎えてやってください。アデュ
- 鬼怒川・日光
(11.7.7)
…とある休日、鬼怒川温泉・日光へ行って参りました。
初日:必死で実験に「けり」をつけ、夕方、つくばから車で鬼怒川温泉へ。
温泉入って、メシ食って、飲んだくれて寝てしまったので、写真ありません (^_^;) いい宿でした。
2日日:鬼怒川温泉から日光へ。まずは日光東照宮を参拝。
(左) | 東照宮の鳥居。震災の影響か、人が少なかった。まぁ、これが狙いだったんだが… |
(中) | 家康様、了解っす (・・ゞ |
(右) | 東照宮に不釣り合いな “ビビッドばーさん” を隠し撮りするアツローを隠し撮り |
これがかの有名な見ざる聞かざる言わざるか…。立体的な彫刻で斬新だったが、意外に小さかった。
続いて、中禅寺湖と華厳の滝へ。中禅寺湖にはアヒルがたくさん居た。華厳の滝は、予想していたよりもずっと大きく、迫力があった。エレベーター(有料)で下に降りて見る価値有り、と思います。
帰りは、宇都宮に寄り道して餃子を食す。とりあえず
口ん中がニンニク になった ( ̄Д ̄;
充実した休息でした!
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Last modified 11.12.31