Tufan(ガイド)とチョコボ(コック)に別れを告げ、僕らはジャイガオン(Jaigaon)へと向けて出発した。ジャイガオンは、インドとブータンの国境の町で、インド側の呼び名である。ブータン側の町はプンツォリン(Phuentsholing)と呼ばれ、その国境はゲート一つを隔てただけである。
ブータンは、自国の文化や自然の保護のため、外国人観光客からは1日200ドルという高額な滞在費を取る。それ故に、インドを旅するようなバックパッカーが行ける国ではないが、しかし!ロンプラ(ガイドブック)に「プンツォリンに限っては、ジャイガオンからビザや滞在費なしで行くことができる。」と書いてあるのを、カズが見つけた。
そこで僕らは、少しでもブータンに足を踏み入れるべくジャイガオン / プンツォリンを目指すことにしたのである。
この時は、ブータン入国がトラブルを引き起こすなど、知る由もなかった…

前日調べたジャイガオン直通のバスは、日曜で運休だったので、タイガーブリッジ(Tiger bridge、右写真)という山の中(ホントに山の中)でバスを乗り継いだ。
運行ダイヤも何もよくわからないまま、山の中に放り出された感じで不安に思ったが、親切な少年が乗り場やジャイガオン行きバスを懇切丁寧に教えてくれて、かなり助かった。旅先での優しさほど、嬉しいものはない。
こうして無事に乗り継ぎはできたが、待っても待ってもジャイガオンに着かぬ…。
結局、ジャイガオンに着いたのが17時半だったので、ガントクから8時間バスに乗っていたことになる。インドのバスは、冷房はないし座席も狭い。おまけに道路が整備されていないため、とにかく揺れまくり、8時間のバス移動は結構きつかった(_ _。)/~~
さて、僕らは早速目的を果たそうと、ブータンとの国境ゲートに向かった。
いよいよブータンへ入国だぁ…、とゲートをくぐろうとしたその時、見張っていた
童顔の警察官が立ちふさがった(-。-;)
「ヘイ君たち、何やってんだい?ビザはあるのか?」
「いや、ありませんけど…」
「じゃあ、ダメだよ。この看板を読んでみ。『ビザがないと入国不可』って書いてあるだろ。」
「はぁ、すみません(´。`)」
なに〜!8時間もかけてやって来たのに、ブータンに入れない!!ロンプラと話が違うぜ(涙)
いっぺんに意気消沈したが、ジャイガオンのホテルにチェックインした後、駄目元でもう一度だけ挑戦してみようということになった。
今度はザックを置いて、軽装でゲートに近づく。先ほどの
童顔の警察官はいなかったが、とりあえず別の見張りの警察官に聞いてみた。
「あの、すみません。僕らプンツォリンに行きたいんですけど、ビザはなくて…」
「あぁ、いいよ。どうぞ。」
あっさりブータン入国成功!おぃ、じゃあ一体さっきのは何だったんだ??よくわからないが、ひとまずメデタシ、メデタシ。
(左) | 国境ゲート。1回目のトライの時に撮影したもの。 |
(右) | 翌朝、撮影したもの。複数の警官がゲートの下で見張りをしている。 |
ジャイガオンとゲートを挟んだだけのプンツォリンは、ジャイガオンの喧噪と、街全体を覆う異臭が嘘のように、静かで清潔な街だった。やはり、ここはインドではなく、ブータンなのである。
僕らは夕飯にブータン料理を食べようと、“一番(ichiban)”という店に入った。メニューを見ると…、そりゃ日本語だか中国語だかわからない店名を付けてるのに、ブータン料理があるわけない(笑)一応、
“Do you have local dishes?”
と聞いてみると、返事はやっぱりNoだったが、店員は
「ブータン料理が食べたいんだったら、おいしい店があるから、そっちに行ってみなよ。」
と言って場所を教えてくれた。せっかく入って来た客なのに、わざわざ別の店を紹介するなんて、商売気のない良い店員さんである。
そのおかげで、僕らはおいしいブータン料理に在り付くことができた。唐辛子が入ったやや辛めの豚肉煮込みなど、インドでは食べられない味で大満足だった。
しばしプンツォリンを散策して、ホテルに戻った。明日、また行こう!
この時点では、まだ童顔の警察官との一悶着が起こるとは思っていなかった…