>3/14 (Mon) 密入国!?
ジャイガオン側のホテルで起きた僕らは、さっそく朝食を食べに国境を越えることにした(日本では考えられないシチュエーションだ…)。門に近づく。昨日2回目であっさりブータン入国に成功した僕らには、自信があった。入国、成功!
昨日、最初に断られたのは一体何だったのか?この時は、逆にその事の方に疑問を持った。

朝からブータン料理をお腹一杯食べて、いったんホテルに戻った。もう一日この地にとどまり、ブータンを満喫しようということをカズと確認し、9時半に解散。お昼まで別々に行動することにした。

僕は迷わず、プンツォリン(ブータン)へ。門に近づく。
ギクリ(汗)
そこには、例の童顔の警察官がいるではないか。その瞬間、何か嫌な予感がした。そして、案の定呼び止められた。

童顔の警察官 「おい、キミ。何やってんだい?昨日も注意したよな、ブータンにはビザなしでは入れないって。それなのに、キミはまた入ろうとしてるし、それに今朝プンツォリン側から出てくるところを見たけど、一体どうやって入ったんだ?」

ボク 「どうやってと言われましても、このゲートからフツーに入れましたけど。見張りをしていた他の警察官は何も言いませんでしたよ。」

童顔の警察官 「そんなはずはないがなぁ。で、朝は何をしていたんだ?」

ボク 「朝御飯を食べに行きました。」

童顔の警察官 「どこで?」

ボク 「この通りのホテルの一階です。」

童顔の警察官 「ホントォ?」

ボク 「本当ですよ!」

童顔の警察官 「しかしだねぇ、キミ。昨日も言ったけど、ブータンはビザ…」

ボク 「いや、それはね、ボクもわかるんですけど、ただロンリープラネットというガイドブックに『プンツォリンなら誰でも入れる』って書いてあるんですよ※1。ボクもプンツォリンをちょっと見たいだけで、それ以外行くつもりないし。それに、警察官によって入ってもいいという人と、ダメだという人がいるのは、どういうことなんですか?」

童顔の警察官 「う〜ん、わかった。じゃあ、まぁ入るがいい。(どうなっても知らんぜ…)」

では、失礼します…。3回目の入国。正直、ドキドキした。そこまでして入らなくてもよかったのではないか…、いや、僕もその時は意地になっていた。ブータンに入った証拠として、是が非でも郵便局から絵葉書を送りたかったのだ。
ゲートをくぐってしまえば、そこは静かだが、親しみのある街。店を見て回っていると、何度もネイティブと間違えられて、現地語で話しかけられた(ブータン人と日本人は、かなりよく似ている)。どうしようもないので、“Hello!!”と切り返すと、

「え〜、キミは外国人かい。どこから来たの?」

「日本です。」

「日本か!爪切りなんか真剣に見てるから、ここの人かと思ったよ(笑)」
(この時、爪が伸びきっていたため、たしかに熱心に探していた。)

「ハハハ。ところで、このプンツォリンはビザなしで入っちゃいけないんですか?ガイドブックにはOKって書いてあるんですけど…」

「そんなの、ノープロブレムさ。ホテルだって、こんなにたくさんあるじゃない。」

そんな地元の人の話を聞いて少し安心し、目的の郵便局へ行って、日本へ絵葉書を送ったり、寺を眺めたりしながら平穏無事な2時間を過ごした。

さて、お昼にジャイガオンのホテルに再集合ということで、11時半過ぎに僕はゲートの方へ向かった。
すると、今度は童顔の警察官だけではない!隣に恰幅の良いお兄様と、背は低いがメッチャ怖そうな顔したおじさまが腕組みして立っているではないか!!

「や、やべぇ(・〇・;)」

僕はスッと通り過ぎようとしたが、そんなことできるわけもなく、即刻トラップ

童顔の警察官 「こいつだ、コイツ→(・〇・;)」

怖顔の役人 「キミ、ちょっといらっしゃい」

ゲートの隅のイスに座らされ、囲まれる。

怖顔の役人 「どういうつもりかね。ビザも持ってないみたいだけど…。」

ボク 「いや、つまり、その〜。ガイドブックに書いてありましてね。今日の朝とかもフツーに入れたので、いいのかと…」

怖顔の役人 「ダメなもんはダメなんだよ。ビザが必要なんだから。で、キミはいつ、どこから来たの?」

以下、10分以上続いた会話(尋問?)は、あまりに長くなるので割愛する。
簡単に云えば、大いにお叱りを受けたわけでありまして、宿泊したホテル、職業、旅の日程、昨日一緒だった相棒(カズ)の行方、果てにはパスポートナンバーまで控えられ、

怖顔の役人 「これがラストチャンスだからな。もうビザなしで入るなよ(`へ´)」

と言われ、ようやく釈放された。(パスポートのチェックまでされてしまったので、帰国時は成田で問い詰められはしまいかと、ちょっとビビリながら帰ってきた(笑))

部屋に戻ると、既にカズがいた。

ボク 「え、おまえ、ゲートで何も言われなかったの??俺なんか捕まるかと思ったよ…」

カズ 「ボク、今はブータン行ってないもん。午後から行こうと思ってさ、今はジャイガオンを回ってたんだ。」

なに〜、あんな尋問みたいなのされたの俺だけかよっ!
でも、その代わりカズは3度目のブータンの地を踏めなかったわけで、カズに経緯を説明し、ブータンに入れないことを伝えると、かなり残念がっている様子だった。

はて、ブータンに行けないとなると、ここでもう一泊する予定だったが、その意味がなくなってしまう。午後になってしまっていたが、僕らは先を急ぐことにした。
次の目的地、コルカタ※2は、ジャイガオンから相当距離があり、移動は無理かと思ったが、運良く夜行バスが14時頃に出発するというので、それに乗って行くことにした。


バスの上に乗り、どこかを見つめるカズ。服装は、ブータンの民族衣装。


バスに乗り込む時、ブータン人らしきおじさんが話しかけてきてくれた(右写真)。
すごく優しい感じの人だったが、どこか強そうな雰囲気があるなぁ…と思っていたら、(後々わかったことだが)実はArmyに所属する、本物の軍人さんだった。

※1ロンプラには、“プンツォリンならビザなしでインドから行ける”という記述があり、実際、欧米人も堂々とゲートをくぐろうとして、童顔の警察官に止められていた。
制度が改正されたのかもしれないが、見張り番の対応がマチマチなところを見ると、徹底されていないか、改正されたばかりなのかもしれない。
※2ムンバイ・デリーと並ぶインドの大都市。カルカッタという英語名の方が知られているが、現在は元のコルカタ(ベンガル語)に改称されている。