少し前
「ヒッグス粒子を遂にとらえた!」というニュースが新聞、TV等で大きく取り上げられていた。その裏でひっそりと(!?)、こんな2つのニュースも報じられていた↓↓↓
【その1】
2010年、NASA が地球外生命体の可能性につながる重要な発見として
「ヒ素をDNAに取り込んで生きる生物」を発表した。ところが、先日この発表の不備を指摘する論文が発表され、NASA は当初の論文を事実上、撤回した。
【その2】昨年、日欧米らの研究グループが
「光よりも速いニュートリノが存在する可能性がある」と発表した。しかし、実験に不備があり、やはり事実上の撤回となった。
その1の NASA の発表に関しては、やや大げさな記者会見を行ったことなど、公表の仕方に問題があったのではないかとは思う。しかし、基本的にはどちらに関しても、故意に誤った結果を公表したわけではなさそうだ。特に、その2の発表に関しては、当事者である研究者達は、相当な覚悟をもって実験結果を公表したはずだ。この分野の常識に反する結果とのことで、世に実験結果の真偽を問う形で公表している。
もちろん、公表前に実験を精査するのが本来の筋だが、公表のタイミングもある。公表して注目されることで、新たにわかることだってある。従って、実験結果を撤回することになったのは残念な結末かもしれないけれど、致し方のない側面もあったように思う。
ひょっとすると勘違いしている人も多いかもしれないが、大学の教授や研究者が科学のことを「なんでも知っている」と思ったら、それは大間違いだ。科学者の端くれであるボクがこんな事を書くと言い訳がましく聞こえてしまうが(笑)、偉い教授の先生だって、たとえ自分の専門分野のことであっても平気で
「わからない」
と口にする。先日、某テレビ番組で地震研究者の苦悩(「なぜ地震を予知できなかったんだ」という風当たりなど…)がドキュメントされていた。「わからないことがたくさんある」という点では、研究者もそうでない人も変わりはないのである。
では、研究者とそうでない人との違いはなにかというと、研究者は、
1)何がわかっていて、何がわからないのかを把握し、問題提起できる。
2)なぜわからないか、何がわかったら面白いか(あるいは役に立つか)を考えている。
3)どうすれば、わからないことを解決できるか、論理的・科学的に戦略を立てられる。
わからないことがある悔しさ、それを知りたい・解決したいと思う好奇心に突き動かされて、われわれ科学者は研究をする。けど、やっとこさ宇宙を構成する素粒子のことがわかってきた程度である (^_^;)
まだまだ、わからないことだらけ。長い目でお付き合いいただきたい。
- 花の色は…
(12.7.3)
マローブルー なるハーブティーを購入。さっそく
“実験” 開始!(←
職業病!?)
葉は、キレイな紫色である。ここに熱湯を注ぐと…
これまた、キレイな
ブルーの溶液 になる。名前の由来はこの色にあるんだろう。スティッチのティッシュ箱も見えなくなる。
ところが、これをカップに注ぎ数十秒放置すると、鮮やかなブルーがみるみる
くすんで しまう。
そこへ、すかさず
レモン を投入!あら不思議、一瞬にして色が
赤色 に変化!
面白い色の変化だ〜! (^o^) これは歴とした化学反応だな。子供向け実験教室の先生になった気分で、
「なぜ、こんな変化が起きるのか?」
を調べてみる。平たくいえば、このハーブに含まれる
アントシアニン という色素が、レモン(酸性)を入れることで構造変化するから。
もう少し詳しく知りたい人は、アントシアニンで Google 検索するか、ボクに聞いてください。なぜ放置すると青色がくすんでしまうのか、なぜ青色から赤色への変化なのか、レモンじゃないとダメなのか…疑問はたくさん出てきますね。
ぁ、肝心のハーブティーのお味は、
くそマズイ (>_<)
というわけで、花の色の変化を楽しんだ後は、鼻をつまんで飲み干すしかない。
- 巨花薄命
(12.5.29)
筑波実験植物園で
世界最大の花、ショクダイオオコンニャクが開花!
5月25日(金)の夜に、このニュースを発見したとき、即座に「これは見逃すわけにはいくまい!」と思った。なんたって、コイツは
十数年 かけて大きくなり、たった
一日半 しか花を咲かさないのだから…。
世界最大の花としては、
ラフレシア も有名だ。(ボクも少し勘違いしていたが…)単体の花としては、ラフレシアが世界最大(直径 ~90 cm)で、ショクダイオオコンニャクは花序(アジサイのような小さな花の集合体)として世界最大(直径 > 200 cm)、ということらしい。ラフレシアも短命で、数日しか花が咲かない。ボクは標本しか見たことがない。
5月26日(土)の朝、さっそく植物園に出かける。開園して間もないというのに、駐車場からはみ出すほどの車と人人人。さすが筑波という土地柄は面白い。因みに、金環日食の時は、駅近くのプラネタリウムでのイベントに 1800人 集まったらしい。。。
で、熱心そうな親と “無理矢理連れて来られた感” 出しまくりの子供達の列に並んで見た花がコレ↓↓↓
で、デカっ! これでも既にピークは過ぎてたらしいが、見上げる大きさだ。
強烈に臭い というタレコミもあったが、こちらはそうでもなかった。近くにいた研究員の方に聞いたところ、金曜の晩に40度近くまで発熱しながら強烈なニオイを放っていたらしい。このニオイで虫を誘き寄せ、受粉させるーこれにショクダイオオコンニャクは蓄えた全エネルギーを使い切り、朽ち果てる。
一見の価値アリだった。他の展示も
研究植物園らしく 楽しめる。ここではたらく研究員に知り合いがいることもわかったので、今度またじっくり見学に行こうと思う。
- πの中身
(12.3.14)
本日付けの
天声人語 は、興味深いというか、示唆に富んでいる。
「数字に対する感覚」の大切さや、
「論理的に考える習慣」の楽しさは、本ページでも何度か書いていることだ。これらは、理系だから文系だから…という次元の話ではない。数字に対する感覚や論理性の無いまま、昨今の時事問題を語る一部のラジカルな人達には、正直、辟易している。
「偶数 + 奇数 = 奇数」を説明できない大学生というのは、なかなかショッキングである。偶数って何?奇数って何?…この定義はみんな知っているはず。この定義に単純に従って、偶数を
2m (m は整数)、奇数を
2n + 1 (n も整数、2n - 1 も可) とおくことさえできればいい。
右の写真を見てほしい。以前、ある滝の近くで見つけた看板。流行りにあやかって表示したのだろう、マイナスイオンの数の比較。
「すげー、やっぱ滝のまわりはマイナスイオンがいっぱいだ〜!」
って思っちゃった人。
ちょい待て (-_-;)
そもそも、マイナスイオンって何なんだ!? という根本的な疑問を無視したとしても、この数値はマイナスイオンいっぱいであることを物語ってはいない。
以前のコラム を読んでいただければ、わかるはず。
4万個/cc なんて、もはや
無に等しい。390個/cc なんて、いったいどうやって測定したんだ!? その超精密機械をボクに見せておくれ。。。こんな風に、少しでも数字を知っていれば、世の中を皮肉っぽく眺めることもできるようになる(笑)
- タダより安いものはない
(12.2.28)
今日、夕飯を食べに食堂に行こうとしたら、研究所のロビー付近が騒がしい。明日から始まる国際シンポジウムの Welcome Reception をやっているようだ。
横目で見つつ通りすぎようとしたら、事務員らしき人が、
「ご飯たくさんあるし、せっかくの機会なので、ぜひ参加して色々な先生方と話して下さい!」
と。みんなフォーマルな格好してるのに、少し気まずいなぁ…と思いつつ、食堂よりマシな飯を
タダ で食べられるとあっては参加するしかない。後輩の
中国人 (♀) に、
「おぃ、タダ飯食えるぞ。」
と教えてやったら、方々に電話をかけまくり、中国人の団体ご一行様を連れてきた(苦笑)
おしゃべりに花を咲かす偉い先生方の横で、
普段着の下っ端研究員 +
中国人わらわら が飯に食らいつく。
ついでに写真を撮ってもらう…
ノーベル賞受賞者、根岸先生と!
温厚で物腰柔らかな先生だった。思いもかけず、めったにない豪華な夕飯となった。
- ハイ、地ー図
(12.1.31)
つくばにある国土地理院
『地図と測量の科学館』に行ってみた。地図見るのって、実はけっこう楽しい!昔、授業中ずーっと地図帳ながめてた時期もあった。山に行くとき、しょっちゅう世話になる
2万5千分1地形図 も、この国土地理院で作成されている。
↑↑↑10万分1の巨大日本立体地図。さすがのボクも、写真を撮ってもらうのにやや躊躇ったが…
テンション上がって、日本アルプスに寝転がってみる (^o^)/
小学生かっ!
写真下方に写っている少年(幼稚園児 !?)が、
「ねぇ、ママ。なんで、この人寝てるの?」
って、訊いてた。フッ、キミも
大人 小学生になったらわかるさ。。。
展示は、古ーい世界地図や地球儀、伊能忠敬の日本地図などがあって、見応え十分。これらを見ていると、昔の人は、
「どうやって、
地球と太陽の距離 を見積もったのだろう?」
「
地球が球体 であることは?」
「
地球の半径 は?」
などと、様々な疑問が沸いてくる。GPS 使うとか、宇宙人に測ってもらうとかナシね。
最初に考えた人って、やっぱりエライ。
本科学館、
最大の目玉 はコチラ→
直径22メートルの日本球形模型
地球って案外丸くて、北海道から沖縄は、もはや全く見えず。。。また小笠原諸島や、八重島が遙か遠くにあることを再認識した。
最初の写真を撮ってもらった時点で、アツロー、もう恐いものなし!写真をお願いし、周囲の目を気にせず、
単独 日本海を泳ぐ。 色んな意味で、海はちょっと寒かった (^_^;)
- 耳をすませば
(12.1.8)
以前のコラム で、ストラディバリウスのニスに関する研究が、欧州の一流雑誌に載ったという記事を書いた。その中で、ボクは
「何でも他のバイオリンとは音色が違うらしく(これはボクにはわからない)…」
と書いている。それから二年、欧州の研究グループによる記事が
アメリカの一流雑誌 (PNAS) に載っていた。
衝撃的な内容 (読売新聞の解説記事をリンクさせてもらいました。)
ストラディバリウスを数億円で購入したバイオリニストは、ショックを受けているのだろうか…? (^_^;)
ただ、ものは考えようである。音楽は、音響データ(科学)以外の要素を含めて奏で、聴かれる。300年以上前に作られた楽器に思いを馳せながら聴くのと、最近作られた楽器の演奏を聴くのとでは気持ちが違うだろう。それは、非科学的であるが、たしかなこと。科学で解決すべき問題でもない。
今回の論文は、興味深い。ストラディバリウスの価値が下がるかどうかも、わからない。科学が解決すべきことは、科学が解決すればいい。そうでないことは、哲学が解決すればいい。だからこそ、歴史的にも自然科学は哲学から独立した学問体系となったのだ。
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